ありがたい事に、いろんな方から毎日のように取材のお誘いやプレスリリースをいただきます。
ただ、本当に申し訳ないのですが、いただいたものすべてに対応できるわけもなく、そこは媒体の性質や反響の期待値などを考慮しながら選定させていただいておりますが、この選定基準みたいなものは大元の部分ではどこのマスコミも共通なんだろうなと思います。
その証拠に「これはぜひ取材に行きたいな」と思わせるプレスリリースには取材当日になると新聞社やテレビ局とかち合う事も多いし、「あまり気が進まないけど義理で取材してみるか」と思わせるものはやっぱり誰も相手にしていない。取材現場で他のメディアの人と雑談する事もあるし、テレビ局が運営するwebメディアに首も突っ込んでいるのですが、やっぱりマスコミが取り上げたいと思うものには一定の法則があると思うんですよね。
今回は、プレスリリースを受け取る側から見た「マスコミをうまく使って宣伝する方法」について少し書いてみたいと思います。
前提としてマスコミはなぜ取材をしているのか?
まさか慈善事業でやっているなんて思っている人はいないと思いますが、マスコミ各社も最終的には利益を出すために存在しています。当たり前ですよね。
なのに、なぜコストを負担し、無料で取材もしてくれメディアにも出してくれるのかと言えば、それは利益を出すための元となる数字を作るためなのです。
テレビ局なら視聴率、新聞社なら発行部数、webメディアなら閲覧数(ページビュー、単にPVとも言う)あたりでしょうか、つまり数字が高いと媒体としての広告力も強くなるのでスポンサーを集めやすくなるんですね。
これをご覧になっている人は何らかの事業に携わっている人が多いと思いますが、収益を上げるための商品やサービスを考える時に必ず相手のメリットとなるものを提供しようとしますよね。需要の無い商品やサービスは売れないわけですから。
プレスリリースもマスコミ各社に対するプレゼンテーションなのですから、やはり相手のメリットを第一に考えないといけないのは同じこと。つまり、マスコミ各社に数字を取らせてあげられる(あるいは、そう思わせる)提案ができないと、なかなか取材には来てくれないし、仮に来てくれたとしてもそれほど反響を呼ばない、つまらない放送や記事になってしまいます。
じゃぁ、数字が取れるネタってどういうものなの? という事になりますが…
これは取材に来てもらいたい媒体をまず知らないと答えは出ません。どんな情報を多く扱っているのか、その中でも特に多くのスペースを割いているのはどんなテーマなのか、web媒体などは人気の記事一覧などが表示されている場合もあるので、そういうところからも推測できますよね。
まずは相手を知る、そして自分が宣伝してもらいたいテーマに合った媒体や番組を選び、さらに数字が取れそうだと思わせるネタや切り口を提案する。自分の商品やサービスばかりをカタログ的にアピールしても(実はこういうプレスリリースは多いのです)なかなか取り上げてはくれないと思いますよ。
つい張り切って取材をしてしまい、つい反響が出てしまったある事例
「商売は心理学」といいますが、これは単に顧客に対してだけではなく、事業にかかわるすべての人に対して常に考えて対応すべき絶対的な法則です。
マスコミに対してもそこは抜かりなく対応していただきたいものです。
先程マスコミにとってのメリットは数字だと書きましたが、では取材を受けるあなたのメリットは何でしょうか?
そう、広告費をかけずに広く宣伝してもらえる事、そして、その宣伝によって売り上げが増えてくれれば御の字という事になります。テレビに出た、何かのメディアに載った事が自慢となり承認欲求を満たされる人もいるかもしれませんが、そもそも取材を受けるメリットは宣伝効果ですよね。そこはやっぱり最大限に効果が出るよう、あなた自身も考えないといけない事なんですよね。
そのあたりはやっぱり大手さんは上手ですね。
ある高級食パンチェーンの取材の話です。結論を言うと、つい力を入れて書いてしまって通常記事の10倍以上の閲覧数(PV)記録、当然他の媒体もこぞって扱った事で、オープン日には50m以上の行列が出来たという、お互いwinwinだった事例です。
まず、最初にいただいたプレスリリースからしてふるっていました。美味しそうな食パンの画像に、簡潔かつ分かりやすく商品の特徴が説明され、他店での顧客の反響まで数秒で目に飛び込んでくる資料構成。まるで、そのプレスリリースをそのまま掲載しても良いほどの出来でした。このレベルになると記事を書くときにめっちゃラクなんですよね。
そして取材に行くと、まるで番組や記事の流れを先読みしているかのような対応です。店舗の外観から店内へ誘導、プレスリリースでは書ききれなかった商品の詳細、社長インタビュー、そして実際にパンが焼き上がるタイミングを合わせて公開、焼き立てのものを試食させ味覚にも訴える。最後はパンのお土産まで持たせてくれるという念の入りようです。
そこまでしないといけないのか?と思われるかもしれませんが、大手のプレス向け内覧会などは共通のノウハウでもあるのか、だいたい同じような流れになりますね。細かい点では各社いろいろ工夫をされていますが、共通するのは書いてほしいポイントや内容をうまく誘導して記憶に残してくれる事と、取材陣を気持ちよくさせる工夫でしょうか。
取材陣も人の子なので、親切に対応してもらえば筆も走りますし、お土産なんて持たされた日には、記事の内容でその分お返ししないと…なんて、やっぱり力が入りますよね。しかもそれにかかるコストは、商品である食パン2個なんですからね。通常10,000PVを流入させるための広告費は安く見積もっても20万円~30万円ですから、どんだけ費用対効果が高いねん!と思いますよね。
以前、あるネットニュースでとある飲食店のオーナーが「取材を受けるのになぜ食事を無料で提供しないといけないのか!」と、一部のメディアに問題提起していましたが、まぁ、気持ちは分からなくもないですが、それでライターが張り切って書いてくれるなら安いものだと僕なんかは思うんですよね。媒体にもよりますが、普通お金出して書いてもらったら数万円~数十万円もコストがかかるものをタダで取材してくれてるわけですし。
ちなみに、僕の場合は取材時の食事代はご厚意があれば甘えますが、基本的にちゃんと正規の代金は払っています。
まぁ、手土産や食事代を負担しろとかそんな話じゃなくて、所詮人間のやる事なのでやっぱり気持ちは大事という事に帰結するわけです。もちろんこれはメディア側にも言える事ですけどね。
まとめ
以上をまとめると、
・プレスリリースはコピーしたものを各社に配布するのではなく、その媒体に合わせた「取材するメリット」を考えて提案する事
・取材に来てもらったら、伝えたいところはしっかり伝え、そして気持ちよく取材してもらう事
僕自身も経験があるのですが、中には「取材を受けてやってるんだ」と言わんばかりのお店もあります。本人はプライドが保てて気持ちいいかもしれませんが、そういうお店はこちらも適当にちゃっちゃと済ませますよね。
結局は商売と一緒でニーズを探る事と、相手に対する思いやりという事だと思います。
具体的なプレスリリースなどの手法については個別にお聞きください。